
現実世界でも,脳と機械をつなぐ技術=BCI(Brain-Computer Interface)や感覚フィードバックなど,SAOのナーヴギアに通じる研究が進んでいます。
本記事(Part1)では,そんな未来に挑む5人の研究者とその研究室を紹介します。
次章から研究者の方の存在を知ることを目的に,「誰が」「どんな分野で」「どんな研究をしているか」について解説します。
ナーヴギアの考察記事:
「ナーヴギアは実現可能か?」BCI研究者が考える技術の現在地と未来像 – 脳波エンジニアが挑むSAO技術の開発日誌
進路ガイドの記事(中高生向け):
SAOに憧れるあなたへ|ナーヴギア技術を目指す進路ガイド – 脳波エンジニアが挑むSAO技術の開発日誌
※本記事では,可能な限り正確な情報の記載を心がけておりますが,誤りが含まれる可能性もございます。あらかじめご了承ください。
※本記事は,ナーヴギアに関連する研究を広く紹介することを目的としており,研究者の方々の名誉を損なう意図は一切ございません。
牛場潤一先生
- 研究分野:ライフサイエンス / リハビリテーション科学
- ナーヴギアとの関連:脳波や神経信号を用いたインタフェース技術の開発
- 所属大学:慶応義塾大学,理工学部
牛場潤一先生は,脳と機械をつなぐBCI(Brain-Computer Interface)分野で国内外から高い評価を受ける研究者です。
※なお,牛場先生はこの技術をBMI(Brain-Machine Interface)と表記されることが多いですが,本ブログでは表記をBCIに統一しています。
特に,BCIを用いた重度麻痺患者へのリハビリ支援「BCI療法」など,BCI技術の社会実装に向けた研究に力を入れており,脳波や神経信号を解析・活用することで,意思伝達支援や身体機能の補助,さらには人間拡張の可能性を探っています。
牛場先生の研究室では,臨床応用に加え,BCIとAIを組み合わせた脳機能の調査など,基礎研究にも積極的に取り組んでいます。
また,医療・福祉分野だけでなく,脳波を使ったゲーム「BMIブレインピック」のようなエンターテインメント領域への展開も進めています。
牛場先生の研究は,人間の認知や運動の仕組みを深く理解し,それを工学的に応用することで,より豊かな社会の実現に貢献するものです。
牛場先生の研究室HP:牛場潤一研究室 | 慶應義塾大学理工学部
以下は牛場先生らの研究グループが開催しているBCI/BMIのイベント
玉城絵美先生
- 研究分野:情報通信 / ヒューマンインタフェース,インタラクション,Human-Computer Interaction(HCI)
- ナーヴギアとの関連:人やロボットの体験を共有する技術
- 所属大学:琉球大学,工学部
玉城絵美先生は,人とコンピュータをつなぐHuman-Computer Interaction(HCI)や人やロボットの体験を共有するBodySharingの研究を通じて,ヒトとロボット,ヒトとヒトの経験共有に挑む先端的な研究者です。
特に「感覚の拡張」や「感覚の共有」といったテーマにおいて,国際的にも高い評価を受けており,HCI分野における革新的なアプローチで注目を集めています。
2011年には,電気刺激を与えて手の動作を制御するPossessedHandを発表し,米Time誌が選ぶ「The 50 Best Inventions」に選出されました。
さらに2025年には,座るだけでアバターやロボットの視覚・聴覚情報を取得し,その操作まで可能な「カプセルインタフェース」の発表も行っています。
この装置により,ロボットやアバターが体験した情報をユーザーが共有できるようになります。
玉城先生の研究は,身体や感覚を通じた体験の共有を可能にすることで,人間の経験の幅を広げ,より豊かな人生経験をユーザに提供する技術として注目されています。
玉城先生の会社HP:h2l.jp
吉村奈津江先生
- 研究分野:情報通信 / 知覚情報処理
- ナーヴギアとの関連:脳波を用いた意思伝達や操作技術の研究
- 所属大学:東京科学大学(旧東京工業大学),情報理工学院
吉村奈津江先生は,脳波を用いた知覚情報処理とBCI技術の研究に取り組む先端的な研究者です。
※なお,吉村先生もBMI表記を用いることが多いですが,本記事ではBCI表記に統一しています
吉村先生の研究では,脳波などの生体信号から運動・聴覚・発話・感情といった情報を抽出し,それを外部機器とのインタフェースに応用する技術開発が進められています。
特に,「聞こえた音」「思い出した音」を脳波から再現する技術は注目を集めており,脳波(EEG)とAIを組み合わせて,母音「ア」と「イ」を思い出した際の音声を再現。結果,第三者による音声の弁別実験では,85%を超える認識率を示しました。
この技術は,従来の対話補助インタフェースに代わる,新しい意思伝達手段としての可能性を秘めており,身体が動かせない患者への支援技術としても期待されています。
吉村先生の研究は,脳の内的な知覚や記憶を外部に「翻訳」することで,人間のコミュニケーション能力を拡張する革新的な取り組みです。
吉村先生の研究室HP:Yoshimura Lab – Brain information decoding, Institute of Science Tokyo
[1]「聞こえた音、思い出した音」を脳波から音で再現する技術を開発 脳内の音声処理機構の理解に向けて | 東工大ニュース | 東京工業大学
古橋武先生
- 研究分野:情報通信 / 知覚情報処理
- ナーヴギアとの関連:脳波を用いた意思伝達技術の研究
- 所属大学:名古屋大学(現在はご退職されている可能性あり)
古橋武先生は,BCIや情報処理システム,教育支援技術の研究に取り組まれてきた研究者です
本記事では,著者の専門であるBCIの観点から,古橋先生の業績をご紹介します。
古橋先生は,脳波を用いて文字入力を可能にする「P300スペラー」の国内研究における第一人者として知られています。
特に,日本語に対応したP300スペラーの開発においては,独自の脳波判別手法を導入することで,高精度かつ高速な入力を実現しました。
このシステムは,身体の自由が制限された患者の意思伝達を支援する対話補助インタフェースとして非常に完成度が高く,患者の生活の質(QOL)を向上させる技術として注目を集めています。
古橋先生の科研費ページ:KAKEN — 研究者をさがす | 古橋 武 (60209187)
本ブログのP300 スペラー解説記事:P300スぺラーとは?脳波で文字入力するBCI技術の仕組み – 脳波エンジニアが挑むSAO技術の開発日誌
田中聡久先生
- 研究分野:情報通信 / ヒューマンインタフェース,インタラクション
- ナーヴギアとの関連:脳波を用いた機器操作技術の研究
- 所属大学:東京農工大学,大学院工学研究院
田中聡久先生(東京農工大学)は,生体信号処理と脳機能解析の分野で先端的な研究を展開している研究者です。
田中先生が率いる東京農工大学の研究室では,脳波・筋電図・眼電図などの生体信号を電気的に取得し,それらを適切に処理・解析することで,人間の認知・感覚・運動に関する情報を抽出する技術の開発に取り組んでいます。
特に,音楽と脳の関係性を脳機能計測によって解明する研究や,感覚刺激に対する脳波のリアルタイム解析についての研究など,感性と科学を融合させたアプローチが特徴です。
また,取得した脳波データを用いてロボットやコンピュータを操作するBCI技術の応用にも力を入れており,非侵襲型から侵襲型まで幅広い計測手法を活用しています。
※なお,田中先生もBMI表記を用いることが多いですが,本記事ではBCI表記に統一しています
これらの研究は,脳外科手術時のモニタリング支援や,てんかん診断支援AIの構築など,医療分野への応用も視野に入れられています。
田中先生の研究室HP:田中聡久研究室 トップ
おわりに
今回ご紹介した牛場潤一先生,玉城絵美先生,吉村奈津江先生,古橋武先生,田中聡久先生は,それぞれ異なる分野から人と技術の融合に挑んでいます。
脳波解析,感覚拡張,意思伝達支援など,アプローチは多様ですが,共通して「人間の可能性を広げる」ことを目指しています。
もちろん,ナーヴギアに関連する技術を研究しているのは紹介した方々だけではありません。
国内外には,同様のテーマに取り組む研究者が数多く存在します。
もし気になる方がいたら,ぜひ自分でもさらに深く調べてみてください。
研究室の公式サイトや論文,講演動画などから,より詳しい情報が得られるはずです。
本ブログでは今後も,ナーヴギア技術に挑む研究者や研究室を継続的に紹介していく予定です。
興味を持った方は,ぜひ次回の記事もチェックしてみてください。
「ナーヴギア関連技術に挑む研究室紹介|Part2」のURL:現在準備中です。公開までしばらくお待ちください。
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