
「ソードアート・オンライン(SAO)」に登場する夢の機器,ナーヴギア。
キリトたちが仮想世界へと飛び込み,現実を超えた冒険を繰り広げる姿に,胸を高鳴らせた人は少なくないでしょう。
もしあなたが「いつか自分も,あんな技術を作ってみたい」と思ったなら——その夢は,ただの空想ではありません。
ナーヴギアのような完全没入型VR技術は,今まさに現代科学の最前線で少しずつ現実味を帯び始めています。
脳とコンピュータをつなぐ「BCI(Brain-Computer Interface)」,触覚や五感を再現するデバイス,AR/VR技術など,SAOの世界を支える要素はすでに研究の対象になっています。
この記事は,10年前にSAOを見てナーヴギアの開発を志し,BCI研究の道へ進んだ著者が,「ナーヴギアに関連する技術を本気で研究したい」と願う中高生のあなたに向けて書いた進路ガイドです。
未来の技術を目指すあなたに,「どんな学問を学べばいいのか」「どんな進路があるのか」「今からできることは何か」を,著者自身の経験をもとにわかりやすく案内していきます。
この記事が,「憧れ」を「現実」に変える第一歩として,夢を抱くあなたへの手助けとなれば幸いです。
重要な関連記事:「ナーヴギアは実現可能か?」BCI研究者が考える技術の現在地と未来像 – 脳波エンジニアが挑むSAO技術の開発日誌
※この記事は,SAO技術に憧れる中高生のための進路ガイドとして,今後も情報を追加・更新していきます。
ナーヴギアって何?技術的な要素を分解してみよう
ナーヴギアは,川原礫先生のライトノベル『ソードアート・オンライン(SAO)』に登場する次世代仮想現実(VR)デバイスであり,使用者の脳と直接接続することで「フルダイブ」を可能にしています。
この技術は,現実世界ではまだ実現されていませんが,脳科学・神経工学・VR技術の進歩によって,少しずつその可能性が見え始めています。
今回は,ナーヴギアのようなデバイスを実現するための2つのアプローチに注目します。
- 🧠 脳や神経を機械と接続し,意識を仮想世界にダイブさせる方法
- 👁️ 五感の情報をフィードバックし,現実を仮想世界に近づける方法
この2つのアプローチを支える技術は,以下の2つの機能が核となります:
プレイヤーの意思を抽出(入力)
使用者が「剣を振る」「歩く」などの行動を実行・思考することで,その意思をセンサによって読み取り,ゲームに反映させます。
五感の情報をフィードバック(出力)
仮想世界の視覚・聴覚・触覚などの情報を,プレイヤーに伝えることで,現実と同様の感覚を再現します。
ナーヴギアは,この二つの技術を成立させることで完成に大きくつながります。
ここからは,ナーヴギアの「意思の抽出」と「五感のフィードバック」という2つの核となる機能に関連すると著者が考えている,研究分野を3つ紹介します。
研究1:BCI(Brain-Computer interface)
脳波を解析し,コンピュータに意思を伝える技術です。
現在は,簡単なゲーム操作やカーソル移動などが可能で,医療・福祉分野でも活用されています。
ナーヴギアの「意思抽出」機能の実現に最も近い分野です。
BCIの解説記事:BCIとは?BCI研究者が語る,脳波で操作するインターフェース(BCI)の可能性 – 脳波エンジニアが挑むSAO技術の開発日誌

研究2:rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)
rTMSは,磁気パルスを使って脳の特定領域に刺激を与える技術です。[1]
医療分野では,うつ病や認知症の治療に使われており,脳の活動を安全に調整できる手段として注目されています。
ナーヴギアのようなデバイスにおいても,脳への「出力」や「感覚の再現」に応用できる可能性があります。
研究3:VR/AR技術+感覚フィードバック技術
仮想空間の構築と,ユーザーの五感に働きかける技術です。
HMD(ヘッドマウントディスプレイ),触覚グローブ,空間音響,嗅覚・味覚再現などが含まれます。
五感の完全なフィードバックは行えていませんが,sonyのプレイステーションVRなどが有名ですね。
この技術は,現実の感覚を仮想世界に近づけることで,没入感を高めるアプローチです。
このほかにも神経から情報を得る技術[2]や人工視覚技術[3]など,ナーヴギアにつながる様々な技術が研究されています。
次章では,こうした技術に携わるために「どんな学問を学べばいいのか」「どんな進路があるのか」を具体的に紹介していきます。
どんな学問を学べばナーヴギアに近づける?
ナーヴギアのようなデバイスを本気で目指すなら,まずは「どんな学問が関係しているのか」を知ることが大切です。
前章で紹介したように,ナーヴギアは「脳とコンピュータの接続」「五感のフィードバック」「仮想世界の構築」など,複数の技術が融合した存在です。
それぞれの技術には,対応する学問分野があります。
ここでは,ナーヴギアに関連する主要な学問を紹介します。
🧠 脳科学・神経科学
- 脳の構造や神経の働きを理解するための学問
- BCIやrTMSなどの基礎になる
- 医学部,理学部(生物系),生命科学系で学べる
💻 情報科学・AI・信号処理
- 脳波や神経信号を解析し,コンピュータに伝える技術
- 機械学習・ニューラルネットワーク・リアルタイム処理などが重要
- 工学部(情報・電気・医用工学系),理工学部などで学べる
🕶️ VR・AR
- 仮想世界の構築と,ユーザーとのインタラクション設計
- UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンも活用
- メディア情報学,デザイン工学,工学部(情報系)などで学べる
🧬 生体医工学・ロボティクス
- 人体と機械をつなぐ技術(義手・義足・感覚フィードバック,BCIなど)
- 生体医工学は,医療に必要な技術を工学の観点から実現する
- 工学部(情報・機械・電気・医用工学系)で学べる
進路選びは「技術的な興味」だけでなく,「どんなアプローチに最も興味がそそられるか」という視点も大切です。
進路選びのヒント|大学・研究機関の探し方
ナーヴギアのような未来技術に関わるには,どんな大学に進めばいいのか?どんな研究室を目指せばいいのか?
ここでは,進路選びのヒントとして,研究分野ごとの大学・研究機関の探し方を紹介します。
🧠 「研究分野・研究テーマ」を決めよう
ナーヴギアのような技術に関わる研究は,1つの学部だけで完結するものではありません。
脳科学,情報工学,VR技術など,複数の分野・研究テーマが複雑に絡み合っています。
まずは,自分が「面白い」「気になる」と感じた技術に対応する研究分野を見つけてみましょう。
その興味こそが,未来の研究テーマの“種”になります。
「ナーヴギアを作りたい!」という気持ちがあるなら,それはすでに立派な出発点です。
そこから少しずつ掘り下げていけば,あなただけの研究テーマがきっと見えてきます。
たとえば,こんな方向性があります:
- 「脳と機械をつなぎたい」→ BCI(脳波インターフェース)や神経可塑性の研究へ
- 「脳や神経の仕組みを深く知りたい」→ 脳科学・神経科学の研究へ
- 「VRで五感をリアルに再現したい」→ 感覚フィードバック技術やVR/ARの研究へ
- 「人の役に立ちたい」→ 生体医工学や医学の研究へ
- 「SAOのようなゲームを作りたい」→ ゲーム開発やUX設計の研究へ
自分の「好き」や「憧れ」を出発点にして,技術と学問をつなげていく––それが,進路選びの第一歩です。
🏫 大学・研究室の探し方
進学先の決定で最も大きな要素としては研究室があげられます。
これは大学の学部は研究となる基本となる学問(数学や物理,統計学など)の知見を深める場所であり,ナーヴギアに関連する技術の勉強・研究は研究室で行うからです。
このため,著者としては学部から大学を選ぶのではなく,研究室から大学・学部を選ぶことが大事だと考えています。
🔍 方法1:大学公式サイトで「研究室一覧」を見る
- 学部・学科ごとに研究室のテーマが掲載されている
- 「研究キーワード」で検索すると見つけやすい
🔍 方法2:AIを活用して研究室を探す
- 実際にナーヴギアに近い研究をしている先生を簡単に見つけられる
- 例:「日本国内でBCIに関する研究を行っている研究室を列挙してください」
- 表示されている情報が正しくない場合が存在すること,情報を網羅的に表示できないことに注意
🔍 方法3:オープンキャンパス・模擬講義に参加
- 研究室の雰囲気や先生の考え方を直接知るチャンス
- 質問してみると,進路のヒントがもらえることも
🌍 国内外の注目研究機関
国内の注目の研究室を以下の記事にまとめているので参考にしてください。
国内の注目研究室紹介:ナーヴギア関連技術に挑む研究室紹介| Part1 – 脳波エンジニアが挑むSAO技術の開発日誌
💡 進路選びのコツ
- 「学部名」よりも「研究テーマ」で選ぶと,将来の方向性が明確になる
- 興味のある技術に関する論文や研究者を調べてみる
- 高校生向けの科学コンテストやインターンも活用しよう
次章では,今からできる準備ステップを紹介します。
「まだ高校生だから…」と思わなくて大丈夫。研究者・技術者への道は,今この瞬間から始められます。
今からできること|中高生のための準備ステップ
「ナーヴギアを作りたい!」と思っても,何から始めればいいのかわからない…そんなあなたに向けて,今すぐできる準備ステップを紹介します。
高校生だからこそできること,今のうちにやっておくと未来の自分が助かることを,技術分野別にまとめました。
🧠 ① 理数系と英語の基礎を固めよう
- 数学(特に関数・ベクトル・統計):AIや信号処理の土台になる
- 物理(波動・電磁気):脳波や神経刺激の理解に役立つ
- 生物(神経系・感覚器):神経工学を学ぶ上での基礎になる
- 英語:研究者になるには英語論文を読むことや書くことが求められる
📌おすすめ:教科書+YouTube解説+問題集の組み合わせで「なぜそうなるか」を意識して学ぼう。
研究では,普段の学びをどれだけ効率よく吸収できるかが大切です。だからこそ,毎日の授業をどう活かすかが重要になってきます。
また,現状できていなくても,10年後にできるようになっていれば良いので,焦らなくて大丈夫です。

💻 ② プログラミングに触れてみよう
- PythonやC言語など,簡単な言語からスタート
- UnityやUnreal EngineでVR空間を作る体験もおすすめ
- 市販の生体信号センサとマイコン(Arduinoなど)を使った簡単な生体信号取得をしてみる(例:脈波取得)
- プログラミングに限らずともパソコンに普段から触れていれば問題ないと思います
- 生成AIを使えるようになっているとさらに良し。
📌おすすめ:UnityやPythonをインストールして簡単なゲームを作ってみる

🧪 ③ 科学イベント・体験に参加しよう
- 高校生向け科学コンテストに挑戦
- 大学のオープンラボや模擬講義で研究者の話を聞く
- VR体験施設や展示会で「技術のリアル」を感じる
📌おすすめ:東京ゲームショーなどの展示会に参加し,実際の機器を見てみましょう
📚 ④ 調べる力を鍛えよう
- 技術系YouTubeやブログで最新トレンドをキャッチ
- 気になる研究者や大学をメモしておくと進路選びに役立つ
- AIを用いた技術調査の方法を学ぶ
📌おすすめ:調べたことをノートにまとめて「自分だけの技術図鑑」を作ってみよう

💡 ⑤ 自分の「好き」を深掘りしよう
- 「ゲームが好き」→ゲームエンジンやUX設計に挑戦
- 「脳に興味がある」→神経科学の本を読んでみる
- 「未来を変えたい」→技術と社会の関係を考えてみる
📌おすすめ:好きなことを「技術とどうつながるか?」という視点で見てみると,進路が見えてくる
また,自分の好きを理解するためには,様々な経験を積むことが大事です。
やってみたら意外に好きではなかったり,逆にやってみたら好きだったりということが出てきます。

未来の技術者は,今のあなたの「好奇心」から生まれます。
次章では,そんなあなたがどんな未来を描けるのか,研究者としての夢と社会への貢献について考えてみましょう。
未来の自分へ|研究者としての夢を描こう
ナーヴギアのような技術は,ただの「かっこいい夢」ではありません。
それは,人の可能性を広げ,社会を変える力を持った技術です。
この章では,あなたが技術者・研究者としてどんな未来を描けるか,一緒に考えてみましょう。
🧠 技術者の使命とは?
技術者は単なる「ものを作る人」ではなく,「未来を設計し,実現する人」です。
ナーヴギアのような技術には,以下のような使命があります:
- 人の能力を拡張する:麻痺した人が再び動けるように。視覚を失った人が世界を感じられるように。
- 新しい体験を創造する:現実では不可能な冒険や学びを,仮想空間で実現する。
- 社会の課題を解決する:教育・医療・福祉・コミュニケーションの壁を,技術の力で乗り越える。
- 人を救う:天災や病気など理不尽な困難から人を守り,痛みを和らげる。
🔬 研究者としての生き方
研究者は「答えを知っている人」ではなく,「問いを探し続ける人」です。
ナーヴギアに関わる研究では,こんな問いが生まれます:
- 「脳はどこまで機械とつながれるのか?」
- 「感覚を人工的に再現するには,何を刺激すればいいのか?」
- 「人の意識や感情を技術で扱うことは,どこまで許されるのか?」
こうした問いに挑むことが,未来の技術を形づくる第一歩になります。
✨ 未来はあなたの手の中にある
ナーヴギアを「本気で作りたい」と思い,その道を考えているあなたこそが,未来の技術者です。
今の好奇心を大切に,少しずつ知識と経験を積み重ねていけば,きっとその夢に手が届きます。

おわりに|SAOの世界を現実にするのはあなただ
ナーヴギアに憧れる気持ち。
それは,ただの想いではなく,未来を変える原動力です。
ナーヴギアは,魔法ではありません。
それは,数えきれない研究者たちの挑戦と失敗の積み重ねの先にある「技術の結晶」です。
そしてその技術は,あなたのような「憧れを持った人」がいなければ,決して生まれません。
🚶♂️ 一歩ずつ,でも確実に
今すぐに脳とVRをつなぐ装置を作ることはできなくても,
今日,Pythonを学ぶことはできる。
今日,脳の仕組みを調べてみることはできる。
今日,「なぜ?」と問い続けることはできる。
その一歩一歩が,未来のナーヴギアにつながっています。
✨ 次の一歩に向けて
- 気になった技術を1つ,調べてみよう
- 興味のある大学や研究室をリストアップしてみよう
- UnityやPythonで,仮想世界の入り口に触れてみよう
- そして何より,「自分の問い」を大切にしよう
著者の一言
私自身,SAOに憧れて技術の世界に飛び込みました。
最初はただの憧れ。人に言うのも恥ずかしいものでした。
でも,調べて,試して,失敗して,また挑戦して…その積み重ねと継続が,いつの間にか「研究」になっていました。
正直,研究は辛いものです。毎日毎日勉強し,現状できないことをできるように試行錯誤を繰り返す日々。
それでも,ナーヴギアに自分の力で近づいているという確かな感触は何物にも代えられないかけがえのないものです。
ナーヴギアに憧れるあなたへ。ナーヴギアはまだ存在しない。
でも,あなたがその第一歩を踏み出せば,それは「いつか」ではなく「これから」の話になる。
憧れは,技術になる。夢は,問いになる。そしてあなたは,未来をつくる人になる。
あなたとナーヴギアの研究ができる日を心からお待ちしております。

※この記事に載っている分野や研究テーマはすべてを網羅することができていません。ぜひ自分でさらに深く調査してみてください
※この記事は私の体験をもとに話を進めています。このため,他の人にとっては合わない可能性が存在します。合わないなと思う場合は,自分に合う道とは何かを問い,考えてほしいです。
※この記事に正解は載っていません。正解は自らの人生で導き出してください。
参考文献
[1]鵜飼 聡. 「精神疾患に対するrTMS治療」, Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.22, No.3, 2011, URL(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/22/3/22_199/_pdf/-char/ja)
[2]Laura Seufert, Mohammed Elmahmoudy, et al;「Stretchable Tissue-Like Gold Nanowire Composites with Long-Term Stability for Neural Interfaces」,Small. 2024 Oct;20(43), URL(Stretchable Tissue-Like Gold Nanowire Composites with Long-Term Stability for Neural Interfaces – PubMed)
[3]ニデック,「人工視覚の研究開発」,URL(人工視覚の研究開発 | ニデック)
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